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お彼岸の時期が近づくと、準備をいつから始め、具体的に何をすればいいのか悩む方は少なくありません。特に初めてお彼岸を迎える場合、全体の流れや守るべきマナーが分からず、失敗して後悔したくないという気持ちが強いでしょう。お供えする食べ物の選び方から、仏壇の飾り方、お墓参りの作法、さらには意外と気になる親戚付き合いや準備にかかる費用まで、疑問は尽きません。また、やってはいけないことがあるのかも気になるところです。この記事では、そうしたお彼岸に関する様々な不安を解消し、滞りなくご先祖様への供養ができるよう、彼岸の準備について分かりやすく解説します。
- お彼岸の準備を始める最適な時期と全体の流れが分かる
- お供え物や仏壇の飾り方など具体的な準備内容を学べる
- お墓参りの作法や服装など知っておくべきマナーを理解できる
- 初彼岸や避けるべき行動など注意すべきポイントを押さえられる
時期とやることを押さえる彼岸の準備
- お彼岸の準備はいつから始める?
- お彼岸にすることリストと段取り
- お彼岸のお供えの食べ物の定番
- 春のお彼岸の食べ物はぼたもち
- お彼岸に土いじりを避けるべき理由
お彼岸の準備はいつから始める?
お彼岸の準備を始める時期に明確な決まりはありませんが、一般的には彼岸入りの数日前から、遅くとも前日までには始めるのが望ましいと考えられます。
なぜなら、お彼岸の期間は春分の日・秋分の日を中日とした前後3日間、合計7日間と定められており、期間が始まってから慌てないようにするためです。特に、お仏壇やお墓の掃除、お供え物の購入など、やるべきことは多岐にわたります。
具体的には、彼岸入りの1週間前くらいから必要なものをリストアップし、3〜4日前から少しずつ掃除を始めると、心にも時間にも余裕が生まれます。週末などを利用して、家族で協力して準備を進めるのも良い方法です。逆に、準備を怠ってしまうと、期間中にお参りに集中できなかったり、必要なものが手に入らなかったりする可能性も出てきます。したがって、事前の計画が、落ち着いてご先祖様と向き合うための鍵となります。
お彼岸にすることリストと段取り
お彼岸の期間中に行うことは、大きく分けて「仏壇・仏具の掃除と準備」「お墓の掃除とお参り」「お供え物の用意」の3つが中心となります。これらを効率良く進めるための段取りを立てることが大切です。
まず最初に行いたいのが、ご家庭にある仏壇や仏具の掃除です。普段はなかなか手の回らない細かな部分まで丁寧に清掃し、ご先祖様を迎える環境を整えます。香炉の灰をきれいにしたり、真鍮製の仏具を磨いたりといった作業が含まれます。
次にお墓の掃除です。お彼岸の前にお墓をきれいにし、お参りの準備をします。敷地内の雑草を抜き、墓石を水で洗い清めます。こちらも家族で都合の良い日を事前に決めておくとスムーズに進められるでしょう。
そして、これらの掃除と並行して進めるのがお供え物の用意です。お花やお線香、ろうそくはもちろん、ぼたもちやおはぎ、季節の果物などを準備します。手作りする場合は、その時間も考慮に入れて計画を立てる必要があります。
以下の表に、準備の段取り例をまとめました。
時期 | やること |
彼岸入りの1週間前 | 必要なもののリストアップ(掃除道具、お供え物など)、お墓参りの日程調整 |
彼岸入りの3〜4日前 | 仏壇・仏具の掃除、お墓の掃除 |
彼岸入りの前日 | お花やお供え物の購入、手作りのお供え物の準備 |
お彼岸の期間中 | お墓参り、自宅の仏壇へのお参り(毎日) |
このように、計画的に段取りを組むことで、一つひとつの供養に心を込めて取り組むことができます。

お彼岸のお供えの食べ物の定番
お彼岸にお供えする食べ物として最も代表的なものは、「ぼたもち」や「おはぎ」です。これらは、邪気を払うと信じられている小豆と、五穀豊穣を願うもち米で作られており、ご先祖様への感謝を示すのにふさわしいお供えとされています。
その他にも、お彼岸の中日にお供えする「彼岸団子」があります。この団子は、ご先祖様が此岸(この世)と彼岸(あの世)を行き来する際のエネルギーになるとも言われています。
また、季節の果物や野菜、故人が生前好んでいたお菓子なども喜ばれるお供え物です。ただし、肉や魚などの生臭物や、香りの強い食べ物は避けるのが一般的です。日持ちしないものをお供えした場合は、お下がりとして家族でいただくのが供養の一つとされています。お供えしたまま長期間放置すると、傷んでしまい失礼にあたるため注意が必要です。
お供え物を選ぶ際は、心を込めることが何よりも大切です。定番の品々に加えて、故人を偲びながら選んだ品をお供えすることで、より深い供養の気持ちが伝わるでしょう。
春のお彼岸の食べ物はぼたもち
春のお彼岸には「ぼたもち」、秋のお彼岸には「おはぎ」をお供えするのが一般的ですが、これらは基本的に同じものです。呼び名が異なる理由は、それぞれの季節に咲く花に由来しています。
春は、牡丹(ぼたん)の花が咲く季節であることから、牡丹餅(ぼたんもち)、略して「ぼたもち」と呼ばれるようになりました。一方で秋は、萩(はぎ)の花が咲く頃であるため、「おはぎ」と呼ばれます。
餡(あん)の違い
呼び名だけでなく、使われる餡に違いがあるとも言われています。
小豆は秋に収穫されるため、収穫したての新鮮で皮が柔らかい小豆を使える秋の「おはぎ」は、皮ごと炊いた「つぶあん」で作られます。
一方、春の「ぼたもち」は、冬を越して皮が硬くなった小豆を使うため、皮を取り除いた「こしあん」で作られることが多いとされてきました。ただ、現代では保存技術が発達したため、この区別はあまり厳密ではなくなっています。地域や家庭によっても考え方が異なるため、どちらが正しいというわけではありません。
このように、季節の花を愛でる日本の美しい文化が、お供え物の呼び名にも反映されているのです。

お彼岸に土いじりを避けるべき理由
古くから、お彼岸の期間中は「土いじり」をしてはいけないという言い伝えがあります。これにはいくつかの説が考えられており、一概に迷信とは言い切れない背景が存在します。
一つ目の説は、春と秋のお彼岸が農作業の節目にあたることに由来するものです。春のお彼岸は種まきの時期、秋のお彼岸は収穫の時期と重なります。この大切な時期に、農作業ではなくご先祖様の供養を優先すべきという、先人たちの教えが込められていると考えられます。
二つ目は、仏教の不殺生(ふせっしょう)の教えに基づく説です。春になり暖かくなると、土の中では虫や様々な生き物が活動を始めます。土を掘り起こすことで、これらの命を奪ってしまうことを避けるため、という考え方です。
そして三つ目の説として、陰陽道における土の神様「土公神(どくじん)」の存在が挙げられます。土公神は、お彼岸の期間中に地上に出てこられるとされており、この期間に土をいじることは神様の休息を妨げ、祟りを招くと考えられていました。
現代において、これらの言い伝えをどこまで厳格に守るかは個人の判断に委ねられます。しかし、このような背景を知ることで、お彼岸がご先祖様だけでなく、自然や他の生命にも感謝と思いやりの気持ちを向ける期間であることが理解できます。

場所別で見る具体的な彼岸の準備
- 自宅でのお彼岸の仏壇の飾り方
- お彼岸の仏壇へのお供えの基本
- 特別な初彼岸の飾り付けの注意点
- お墓参りの基本的な流れと持ち物
- お墓参りに行く際の服装マナー
- 滞りなく進めるための彼岸の準備
自宅でのお彼岸の仏壇の飾り方
お彼岸にご先祖様をお迎えするため、自宅の仏壇はいつも以上に丁寧に飾り付けを行います。まず基本となるのは、念入りな掃除です。毛先の柔らかいハタキなどで仏壇内部の埃を払い、乾いた布で優しく拭き上げます。ご本尊やご位牌も、傷つけないように細心の注意を払いながら清めましょう。
掃除が終わったら、仏具を所定の位置に配置し、飾り付けを行います。
お花の飾り方
仏壇にお供えする花は「仏花(ぶっか)」と呼ばれます。菊やカーネーション、リンドウなどが一般的ですが、故人が好きだった花を飾るのも良い供養になります。ただし、バラのようなトゲのある花や、香りが強すぎる花、毒を持つ花は避けるのがマナーとされています。花は枯らさないように、こまめに水を替えましょう。

仏具の配置
仏壇の中心にはご本尊、その次にご位牌を安置します。そして、お供えをするための仏具を並べます。基本的な配置は宗派によって異なりますが、一般的に「三具足(みつぐそく)」または「五具足(ごぐそく)」を揃えます。
- 三具足: 香炉(中央)、燭台(右)、花立(左)
- 五具足: 香炉(中央)、燭台一対(左右)、花立一対(左右の外側)
お彼岸という特別な機会に、仏壇の飾り方を見直し、心を込めてご先祖様をお迎えする準備をすることが大切です。
お彼岸の仏壇へのお供えの基本
前述の通り、お彼岸にはぼたもちやおはぎ、団子、果物などをお供えしますが、仏壇へのお供えには配置の仕方やタイミングにも作法があります。
まず、炊きたてのご飯である「お仏飯(おぶっぱん)」と、お茶やお水をお供えします。これらは毎日新しいものに取り替えるのが基本です。お仏飯はご本尊やご位牌の正面に、お茶やお水はその手前に置きます。
お菓子や果物などは、「高坏(たかつき)」と呼ばれる足つきのお皿に乗せてお供えすると丁寧です。これらは仏壇の左右に一対で置くのが一般的です。お供え物は、直接仏壇に置かず、半紙や懐紙を敷いた上に置くと良いでしょう。
お供えをするタイミングは、朝のお勤めの前が望ましいとされています。そして、お供えした食べ物は、お昼頃には下げ、家族で「お下がり」としていただくのが習わしです。これは、ご先祖様からのお下がりをいただくことで、その力を分けてもらい、家族の健康や安全を願うという意味合いがあります。食べ物を無駄にしないという、仏教の教えにも通じる大切な作法です。
特別な初彼岸の飾り付けの注意点
故人が亡くなり、四十九日の忌明け後に初めて迎えるお彼岸を「初彼岸(はつひがん)」または「新彼岸(しんひがん)」と呼びます。初彼岸は、故人の霊が初めて彼岸に帰ってくる大切な機会と考えられており、通常のお彼岸よりも丁寧に供養を営むのが一般的です。
飾り付けに関しても、特別な配慮をすることがあります。地域や宗派によって異なりますが、初彼岸に限り、仏壇の前に「白紋天(しろもんてん)」と呼ばれる白い提灯を飾る風習があります。これは、故人の霊が迷わずに家に帰ってこられるようにという、目印の意味合いを持ちます。この提灯は初盆にも使われることがありますが、初彼岸で一度使ったら、その後は使わないのが一般的です。
また、お供え物も通常より少し豪華にしたり、親戚や故人と親しかった方を招いて、僧侶にお経をあげてもらう法要を営んだりすることも少なくありません。初彼岸を迎えるにあたっては、事前に菩提寺や地域の習慣に詳しい方に相談し、どのように準備を進めるべきか確認しておくと安心です。故人を偲ぶ気持ちを第一に、心を込めたお迎えの準備をすることが何よりも重要です。

お墓参りの基本的な流れと持ち物
お彼岸の最も大切な行事の一つが、お墓参りです。ご先祖様が眠るお墓をきれいにし、感謝の気持ちを伝えるために、正しい手順と準備を心得ておきましょう。
お墓参りの持ち物リスト
お墓参りに行く際は、掃除用具とお参り用具の両方を準備します。忘れ物がないように、事前にリストアップしておくと便利です。
- 掃除用具: 手桶、ひしゃく、スポンジやタワシ(墓石を傷つけない柔らかいもの)、雑巾、ほうき、ちりとり、軍手、ゴミ袋
- お参り用具: 生花、お供え物(お菓子や果物など)、数珠、線香、ろうそく、ライターやマッチ
霊園によっては手桶やひしゃくを借りられる場合もありますが、持参すると確実です。
お墓参りの手順
- 寺院への挨拶: 菩提寺の境内にお墓がある場合は、まずご本堂にお参りし、住職に挨拶をします。
- お墓の掃除: まずお墓の周りの雑草を抜き、落ち葉などをほうきで掃きます。次に、手桶に水を汲み、ひしゃくで墓石に水をかけ、スポンジなどで優しく汚れを落とします。花立や香皿などもきれいに洗いましょう。最後に、きれいな雑巾で水分を拭き取ります。
- お供え: 新しい水を花立に入れ、持参した生花を飾ります。水鉢にもきれいな水を満たし、お菓子や果物などのお供え物を供えます。
- 線香をあげて合掌: ろうそくに火を灯し、その火で線香に火をつけます。線香の火は手で扇いで消すのがマナーです。香炉に線香を立て(または寝かせ)、しゃがんで合掌します。合掌の際は、ご先祖様に感謝の気持ちを伝え、近況などを報告しましょう。
- 後片付け: お参りが終わったら、お供えした食べ物はカラスなどに荒らされる原因になるため、必ず持ち帰ります。ろうそくの火もきちんと消し、ゴミはゴミ袋に入れて持ち帰りましょう。
この一連の流れを丁寧に行うことで、清々しい気持ちでご先祖様と向き合うことができます。
お墓参りに行く際の服装マナー
お墓参りに行く際の服装には、厳格な決まりはありませんが、ご先祖様への敬意を示す場であることを意識した、控えめな服装を心がけることが大切です。
普段のお墓参りであれば、基本的に平服で問題ありません。ただし、「平服=普段着」という意味ではない点に注意が必要です。赤や黄色といった派手な色合いの服や、肌の露出が多い服装(タンクトップやショートパンツなど)、ダメージジーンズのようなカジュアルすぎる服装は避けるべきです。黒や紺、グレー、茶色といった落ち着いた色合いの、清潔感のある服装を選ぶのが無難です。
一方で、初彼岸などで法要を兼ねる場合は、略喪服(ダークスーツや黒のワンピースなど)を着用するのがマナーとなります。事前に法要の有無を確認し、場にふさわしい服装を選びましょう。
また、お墓は足場が悪い場所も多いため、歩きやすい靴を選ぶことも重要です。ヒールの高い靴やサンダルは避け、スニーカーやローファーなどが適しています。掃除をすることも考慮し、動きやすく、多少汚れても良い服装を選ぶと安心です。

滞りなく進めるための彼岸の準備
この記事で解説してきた、お彼岸の準備に関する重要なポイントを以下にまとめます。
- お彼岸は春分の日と秋分の日を中日とした前後3日間、合計7日間の期間
- 準備は彼岸入りの数日前から余裕を持って計画的に始める
- 行うべきことの基本は「仏壇の掃除」「お墓の掃除」「お供え物の用意」
- お墓や仏壇の掃除はご先祖様をお迎えするための大切な準備
- お供え物の定番は「ぼたもち」や「おはぎ」、季節の果物など
- 春は牡丹にちなみ「ぼたもち」、秋は萩にちなみ「おはぎ」と呼ばれる
- 肉や魚などの生臭物や香りの強いお供え物は避けるのが一般的
- お供えした食べ物は「お下がり」として家族でいただくのが供養
- お彼岸の土いじりを避けるのは、農作業の節目や不殺生の教えに由来
- 初彼岸は故人が初めて帰ってくる大切な機会で、より丁寧に供養する
- 初彼岸では白提灯を飾るなどの特別な準備をすることがある
- お墓参りには掃除用具とお参り用具の両方を忘れずに持参する
- お墓参りの服装は、派手な色や露出を避けた控えめな平服が基本
- 法要を伴う場合は略喪服を着用するのがマナー
- 心を込めて準備を行い、ご先祖様に感謝を伝えることが最も大切